推しが卒業するらしい

 

推しが卒業するらしい。

 

 寝耳に水というか、晴天の霹靂というか、本当にその瞬間はあまりにもナチュラルに、あまりにも突然私に降りかかってきた。

 

推しが年内での卒業を発表したらしい。

 

 にわかに信じがたい言葉の数々がタイムラインを流れていった。少し前からそのような噂は耳にしていたけれど、誰を応援していてもきっといつかは訪れる卒業という瞬間が、正直思っていたよりもずっとはやく訪れてしまったらしい。

 

 推しが年内で乃木坂46を卒業する。

 

 私の本業はジャニオタであるし、乃木坂46に対しては握手会にもいかないいわゆる茶の間であったけれど、伊藤万理華という人の才能に惚れた1人のファンとして、この度の彼女の卒業はあまりにもショックである。


 『気づいたら片想い』から乃木坂46に気持ちを注ぎ始め、冠番組を初めて見た日にひな壇に座っていた万理華を一目見て好きになった。なぜだかわからないけど、私はこの子が好きだと思った。伊藤万理華という人に、気づいたら片想い、していたわけだ。

 

 まりっか17をはじめ、個性的な私服もその世界観も、彼女の実力や発想力表現力はしばしば内外から一目置かれるものだった。(とおもう。おたくのひいき目でないことを祈る)ある意味アイドルらしからぬところで、彼女はその才能を発揮していたのかもしれない。そうして彼女の才能が認められていく反面で、その結果が決して「選抜」や「福神」というところに結びついていかないもどかしさを、いつも抱えていた。MVなどの乃木坂46内の序列に関しても、メディア露出という側面で見ても、「選抜」に入るということは、やはり大きな意味を持ってしまう。悲しくも。きっと伊藤万理華さん自身も、アイドルらしからぬ「個性的」である自分個人が自分らしく輝ける嬉しさと、乃木坂46としての自分が決して前列に進めないことへのもどかしさを感じていたのではないかな、と考えて止まない。どん底みたいに、辞めたいと思ったことが、何度も何度も、あったんじゃないかなあとおもう。あくまで推測だけれど。そしてそれさえも、アイドルの世界では1つの作品として世に放たれた。裸足でSummerの特典映像として収録された伊藤万理華さんと井上小百合さんの「いくあてのない僕たち」は、選抜とアンダーを行き来する2人に重ね合わせずにはいられないもので、何度となく気持ちを重たくしたものだった。その歌やMVがたくさん評価されることに、嬉しい気持ちと、なんとも言えぬような気持ちを抱えざるを得なかった。それは私たちファンに伝わるくらいのものだから、本人たちは本当により強く、そのことを感じていたのではないかなあ。

 

 万理華さんより少し先に、同じグループの中元日芽香さんが卒業を発表した。私は彼女のパフォーマンスがとても好きであったけれど、彼女もなかなか選抜に入れないところで戦う内の1人であった。中元日芽香さんは卒業に関する8/7のブログでこう語った。

 

「 私、アイドルとして
優秀ではなかったと思うんですね。
 なかなか結果は出さないし
メディアにも頻繁に出るわけでもないし
見ていてモヤモヤする方も
沢山いらっしゃったのではないかなと。」


 日々アイドルを目にしている我々からしてみれば、推しや自担が頑張っていること、努力していることは十二分に理解しているし、決して安易に、自分の応援している相手が「優秀ではない」なんて思ったりしないんだけれど、アイドル本人に、そう思わせてしまうシステムなのだと、選抜という制度を通じて、中元日芽香さんの卒業を通じて考えた。アイドルとして優秀って、なんなんだろう。メディアに出ることだけが、選抜されることだけが全てじゃないけれど、ある側面から見たらきっと、それが全てなのだと。だからきっと、中元日芽香さんにとっても、そして推しである伊藤万理華さんにとっても、この5年間はある意味本当に、あまりにも長い、自分との戦いだったのではないかなとおもう。インフルエンサーで万理華さんは本当にたくさんの人の目に止まったと思っているし、個展もソロでのCMも決まって、ようやく、ようやく伊藤万理華さんという存在がもっともっと前に出てくる、これからだと思っていたところの、卒業。長かったね。5年間は。本当に、お疲れ様でした。とにかく彼女にはどんな形でも、幸せになってほしいとおもう。

 

 Jr.も女子ドルも応援していると、卒業を発表されることは良いことなのかとかどうとかなんとかいう議論をよく目にするけど、どっちにしたって辛いものは辛い。年末までのこの期間を、どのような気持ちで推しを見守れば良いかわからないし、年末以後どのような気持ちで乃木坂46を見つめられるだろうかとおもう。この年末までの2ヶ月がなんとなく、うまく言えないけれど、悪く言えば、執行猶予とでも、いうだろうか、最後の日までの時間を与えられてることは、ある意味で酷のような、そんな気が来てしまっている。諦めの悪いファンでごめんね。3期生という新しい風が入ってきたけど、万理華はそんな年齢だという感覚もなかったし、正直、正直なところ、ずっと、乃木坂46という場所で、活躍の場をもらうことなんか、いくらでもできるとおもうから、だからこの卒業が、万理華さんにとって幸せなのかなあって、ちょっと不安になってしまうんだよ。諦めの悪いファンでごめんね。これからだ、と信じた今このタイミングでの卒業を決断した万理華、かっこいいよ、きっとこれからも、万理華は万理華らしくいてくれるよね。

 

 それでもわたしは、伊藤万理華さんが、乃木坂46を卒業して描く夢、叶えたい夢があるというなら、わたしはそれを応援したい。アイドルとしての伊藤万理華さんが本当に好きだったから、素直に前を向くまでには、まだきっと時間がかかるけど、わたしが惚れた伊藤万理華さんのたくさんの才能が、もっともっと広いところで認められる世界を見たい。そのためのスタートだと、信じてる。いつかできるから、今日できるよ。ありがとう伊藤万理華さん。お疲れ様でした。年末までの短い期間も、そしてこれから先も、活躍を楽しみにしています。