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アイドルとわたしのはなし


'あなたにとってアイドルとは?'

の問いに100人いれば100の答えがあると思うし、人1人の中にも何通りかの答えがあって、100人いれば200、300の答えがあると思う。


 少し考えて出てきた、わたしにとってのアイドルは、
'日々の生活に彩りをくれる人'

 仕事に疲れた日、嫌なことがあった日、アイドルは画面の中で、雑誌で、舞台の上で、わたしのことを肯定も否定もせずにそこで笑ってくれている。上司に「あれはダメ、あっちはいいけどそれもダメ、」と言われる毎日のなかで、アイドルはそれをしない。それは時に残酷なことなのかもしれないけれど、わたしにとってはそれがちょうどいい。
 だからわたしは、アイドルは毎日を楽しくしてくれるものだから、楽しくなれないものについては絶対に口を挟まないし見ない。プライベートとかカノジョとかそういったものはいくらでも楽しんでくれて構わないけれど、わたしは全く興味がないしバレないように上手くやっといてくれればいいと思ってる。過度な要求もしたくないし、わたしはたぶん、わたしによって作られたアイドルに対する像を、アイドルによって壊されるのが嫌いなのだ。アイドルしてる時に見せてくれる綺麗な側面の数々を、アイドル自身の言動やオタクの言動によってマイナスなものに変えられたくないのである。だからわたしは、アイドルがアイドルしている瞬間にしか興味がないし、振り切ってアイドルしていて欲しいと思っている。大きな会場で目一杯のライトと歓声を浴びて体いっぱいに踊って歌っている姿が好きだ。そういった意味で、わたしはやはりアイドルを'偶像'として消費しているのだと思う。もちろん応援している彼は彼自身の毎日を生きているわけだけど、彼が「チッ人身事故で電車遅れてんのかよ…」とか毎日考えるような生身の人間として生きているわけだけど、極論、それはそうして生きている山田太郎さんであるかもしれなくて、わたしは偶像としてのアイドルを追っている。どこかで今わたしと同じようになんとも息苦しいような毎日などは送って欲しくないし、アイドルとしての彼はそんな生活をしていないのだとさえ思えてくる。毎日を生きる生身の人間・山田太郎は生きているけど、山田太郎がアイドルになった毛利柊和くんは生身の人間である、という意識ができないのかもしれない。なんだか日本語がうまく使えなくてもどかしいけれど伝わったら幸い。物理的に近くで顔を見たいという気持ちはあるけれど、それ以外の部分でわたしは決して彼に近づきたいと思わない。近づきすぎない今の距離を、なにより心地よく思っているのだと思う。

 

 わたしの毎日を普段より少し楽しいものにしてくれるのがアイドルだから、必要な時に必要なだけアイドルを楽しむ。いろんな人をいろんなように応援してきたけれど今は自担の顔を見ている時間がなにより楽しい。何度も何度もディスクが削れるほど録画を見たり、穴が開くほど雑誌を読み返す時期があったかと思えば、1日に一度もアイドルの顔を見ないこともあって、わたしが楽しいようにアイドルを追いかけている。アイドルを追いかけて楽しんでいる自分、という理想に向かってアイドルを追いかけている。コンサートにいくのも雑誌を読むのもテレビを見るのもお金を出すのも、決してすべてが自担のためではない、綺麗な格好でアイドルをしている彼を応援していたいという理想を持ったわたしのためだ。


 もう一つ、わたしにとってのアイドルは、'非日常をくれるもの'であり、'わたしにないものをくれるもの'である。御察しの通りわたしは生まれた時から引っ込み思案で口下手な性格が災いした絵に描いたような陰キャで学生時代は仏のように毎日を過ごしていたわけだけれどそんなわたしにとって華やかな存在のアイドルはいつも心を躍らせてくれる。周囲と切磋琢磨しながら努力をしながらもキラキラと楽しそうにアイドルをしている姿を見ると元気になれる。勝手にだけど一緒になって楽しんだり悔しがって見たり、仲間とワイワイしている姿を見ると、わたしが通ってこれなかった青春を、擬似的にでも味わわせてくれるような気持ちになる。そんな存在のような気がしている。
 そもそも今でこそオタク各位から'きよちゃん'と呼んでもらえるようになったこの名前も本名ではなくて(インターネットの世界だから仕方ない部分でもあるけれど)、ツイッターであったり、現場で'きよちゃん'と呼んでもらえる時、おたくをしている時、わたしはわたしでありながら、すこしだけいつものわたしではないような感覚を味わっている。コンサートの時、いつもよりすこしだけ華やかな服と華やかなお化粧をして行き、きよちゃんと呼んでもらえるその瞬間は、わたしにとって非現実なのである。

 

 やはりわたしは、理想を追って生きている。アイドルに対しても何に対しても、頭の中に理想があるし、悪い形でそれを崩されたくないと思っている。1秒でも長く、大好きなアイドルがわたしの理想であり、毎日を楽しく生きられる癒しをくれる人でありますよう、これにて筆を置きます。